物質は極低温あるいは高圧で,常温常圧とは異なる性質を示すことがあります. こうした環境下での物質の構造と相転移を研究することは,さまざまな物性の構造的起源を解明する上でも重要です.
本装置は閉サイクルHe循環式小型冷凍機を搭載可能な,オフセンター型X線回折計です. 単結晶試料から回折されたX線強度はコンピュータ制御により自動測定され,結晶構造の解析,構造相転移の観測,散漫散乱の分析に使用されます. この装置の特徴は10Kまでの低温の測定ができるほか,クライオスタット内部には小型ダイヤモンドアンビルセルを搭載でき,高圧低温の測定も可能です. また,クライオスタットの代わりに高圧セルや高温炉を搭載して測定することもできます.
X線発生部は18kWの回転対陰極型で,陰極にはMoまたはAgを使用でき,グラファイトのモノクロメータで単色化されます.
オフセンター4軸クレードルはドイツのHUBER製(424+511.1)で,2Θ<90°,ω<35°,|χ|<45°(クライオスタットがなければ360°),|φ|<175°が測定範囲.温度は10K〜550Kで測定可能です. P>2007年,制御コンピュータはLinux(Red hat)に更新され,4軸計の測定範囲は|ω|<37.5°まで拡張されています.
測定原理
結晶にX線を入射すると,ブラッグの条件(2dsinθ=nλ)に従って,3次元的に特定の方向に回折X線が観測されます. そして,これらの回折強度を解析することによって,元の結晶内の分子あるいは分子の3次元的な配列の様相を知ることができます. また,結晶の温度を変化させることによって,特定のブラッグ反射の強度が変化したり,新たな反射が現れることがあります. こうしたデータを測定して解析し,結晶内で起こった構造相転移についての知見が得られます.